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M様 
どひー,雨樋ブった切って外してるぅ〜! 
ソーラーどうやって下ろしたんだぁ? 
等々,あれこれ驚愕しつつ読ませていただきました。 
まずは,雨樋についてなんですが,切断しなくても外せるタイプの横樋もありますけど, 
これは無理だったのではないかと。 
だとすると,同じ形の樋が絶版になってることがあるのですが,確認されましたか? 
復旧にあたり,必要な部材が入手不可だと,全取っ替えになる場合が...(^^;) 
カラーベスト屋根の状況なんですが, 
> この辺りで、どの程度の塗り方は。。。お分りですね<(__)> 
って,業者施工でもこのような仕上りは,特に珍しくはないです。 
(屋根は普通,施主さんから見えませんから) 
前回塗り替えたときの塗膜,ちゃんと密着しているでしょうか? 
写真で見る限り,垂れ流れはあっても,剥がれはないようですが, 
もし,皮スキでちょっと引っ掻くと剥がれるような場合, 
しっかり高圧洗浄するとべろべろ剥けてくると思います。 
お手持ちの高圧洗浄機の型番,わかりますか? 
スペックが知りたいです。 
家庭用の70〜80kg/cm2(または7〜8MPa)程度で回転式ノズルではない場合, 
距離5センチで噴射してみてください。 
(回転式ノズルの場合は8センチくらい) 
→それで剥がれなければ大丈夫でしょう。(たぶん) 
→それで剥がれるようなら,剥がせるだけ剥がしてしまってください。 
いずれにしても,残った塗膜は「活膜」と看做して問題ないでしょう。(たぶん) 
洗浄する前に,垂れ流れの部分は汚らしいので削り取りたいところですが, 
サンダーを使うと,水性の塗膜は摩擦熱で軟化・粘着してしまうでしょうから不可, 
カッターの刃を取り付けるタイプのスクレーパーで削れるようであれば削ってください。 
まあ,屋根なんで,わからないからいいや,と思えれば,それでもいいです。 
藻の類いは生じていないように見えますけど,濡れるとスゴク滑る場合があるので, 
洗浄したところだけを歩くようにしてください。 
頂上部から洗いながら下っていくと,外周部に向かって徐々に溜まっていく汚れが 
最後に一気に外側へ飛び散ることになります。 
なので,洗浄は下り方向から頂上部に向かって行い, 
頂上迄洗ったら(飛び散っているホコリやゴミを)上から下へざ〜っと洗い流すのがよいです。 
この段階で汚れ水を静かに横樋に流せるので,雨樋はまだ取り外さない方がよかったのですが 
...電撃的にバラされた雨樋はもはやすでに無いわけですよね (^-^;) 
妥当な順番からすると,次がトタンのケレンです。 
> 鉄部分(白色)も、前色の緑の上からそのまま(ケレン無し)塗りました。 
> ので、リフティング?なのか、パリパリぽくなってる所多いです。 
「リフティング」というのは,既存の塗膜の上に新たな塗料を塗り重ねたときに 
既存の塗膜が浮き上がってくる(リフトする)という意味ですので, 
この場合は単なる不良塗膜ですってば。 
どの程度剥がすのにどの程度の労力がかかるのか,やってみないとわかりませんが, 
明らかに密着不十分な剥がれ方をするにも関わらず,全部剥がそうとすると簡単には剥がれない 
というような場合,もう一度書きますけど,ケレンして3回塗るよりも取り替えた方が良いです。 
いや,塗るんだ!という場合,前回「シアナミド鉛錆止塗料」をお薦めしましたが, 
2液形でもいいぜ〜,とお考えなら,「弱溶剤2液形エポキシ錆止塗料」をおすすめします。 
その中間に「弱溶剤1液形エポキシ錆止塗料」というものもあり, 
当店でも一時使用していましたが,「シアナミド鉛錆止塗料」と大して変わらんではないか 
と思うに至り,現在は2液に切り替えました。 
それから,カラーベストの塗装の手順ですが,はじめに「縁切り」してください。 
今はまだ空いている隙間もこれから3回キッチリ塗ると塞がってしまい, 
雨漏りが生じるおそれがあります。 
Mさんのお家の屋根は勾配(傾斜角度)がゆるいので,なおさら。 
下の写真は,縁切のための工具です。 
  
真ん中のものは当店で通常使用するもので,長い柄が付いていて刃の部分が「ヘ」の字形に 
折れ曲がっている皮スキです。(ホームセンターで購入しました) 
これを2本用意し,1本を重ね目に差し込んでちょっと持ち上げると,塗料で張付いたところが 
「ばきっ」と剥がれます。 
その持ち上げた左側へもう1本を差し込んでちょっと持ち上げ「ばきっ」。 
はじめに差し込んだ1本を抜き取ってその左側へ差し込んでちょっと持ち上げ「ばきっ」。 
これをくり返してゆきます。 
あまりにもがっちりと張付いている場合,力任せに持ち上げると割れてしまうので 
注意してください。 
下のものは「塗膜カッター」という工具で,最近,同業者から教えてもらい,試しに購入。 
【編註:同業者とは,広島県の塗装店「シップペイント」の藤田さんです】 
差し込んで“切る”感じですが,刃が薄いので,フィーリングがイマイチです。 
多少隙間が残っている場合にはこれでOKかもしれませんが, 
びったりと強固に張付いている場合,役に立たないのではないかと。 
なので,先端部の厚さを0.3ミリ,根元部分3ミリくらいのテーパー状の頑丈な刃にして, 
どうせならラバーグリップにしてほしいというのが私の感想です。 
一番上は,「エスパッター」という名前の工具で,前述の2点はいずれも数百円なのに対し, 
これは1万円近いです。 
値段を調べて,すいぶん高いなーと思いましたが,実物が届き手に取って,納得。 
ずっしりと重くてゴツイ,とても握りやすくて,刃がテーパーになってるのもエライ。 
後ろからハンマーで叩ける構造なので,がっちりと張付いている場合にはこれが良いでしょう。 
とりあえずホームセンターで真ん中のものを購入してやってみてください。 
で,縁切の後はシーラーです。 
「塗り替えQ&A」の「屋根塗装編」に書いた通り, 
ローラーだけで縦方向にグイグイ塗るのはダメです。 
面倒でも,ハケで重ね目を塗り,ローラーを横に動かす塗り方をしてください。 
次に「タスペーサー」というものを装填します。 
「02」と「03」の2種類のうち,安くて装填しやすいのは「02」ですが, 
効果が高いと思われるのは「03」なのでこちらをおすすめします。 
  
これはこのように使います。 
  
この「タスペーサー」,塗装後の縁切を不要にする画期的な小物です。 
さて,縁切の目的は,「上下の重ね目が塗り替えの塗膜で張付いてしまうことにより, 
塗っても埋まらない横方向の継目から侵入した雨水が内側に溜まり雨漏りを生じることを防ぐ」 
ほかに,もう一つ「屋根材の裏側の結露による湿気を逃がすための通気を確保する」ことにも 
あります。 
なので,“単に雨漏りを防ぎたいだけ”なら屋根材1枚に「タスペーサー」1ケでもよいのですが, 
“通気性確保”という観点からすると,2ケが望ましいでしょう。 
そうすると,下の写真のように,1平米につき10ケの「タスペーサー」が必要です。 
  
価格は500ケで1万円台前半ですが,「タスペーサー」を使用しない場合の縁切の労力と 
使用する場合の効能を考えると,十分採用の価値があります。 
以上の後,カラーベストの上塗を2回→トタン部分の上塗を2回です。 
> ◎屋根は、水系シリコンで塗装予定ですが、洗浄して上塗りのみ2回ではどうでしょうか? 
既存塗膜が残っていてシーラーが染み込まないであろう状況であっても,既存塗膜と上塗塗料との 
“接着剤”として塗付する意味もあるので,シーラーを省略することはおすすめできません。 
なお,カラーベストの上塗塗料は,前回,「水系シリコン」をおすすめしましたが, 
水谷ペイントの方に御意見を伺ったところ, 
『初めての塗り替えで下地キッチリできるのならともかく, 
そんな状態の屋根に「水系シリコン」はもったいないですよ。 
「水系カスタムシリコン」でいいんじゃないですか? 
それだって,結構もちますよ。』 
とのことです。 
う〜ん,そう言われてみればそうかなー,とも思うのであります。 
屋根の面積が80平米だとして,「水系シリコン」と「水系カスタムシリコン」の価格差は 
2万円強です。 
Mさん御自身で判断してください。 
なお,当方のページをご覧になって,すでに把握していらっしゃると思いますが, 
この時期,屋根の塗装には適しません。 
高圧洗浄の結果,塗膜が無くなって屋根材の白っぽい素地が露出する部分が生じた場合, 
つまり,水が染み込む状態になった場合, 
朝起きて,露天駐車の車が夜露でびっしょり濡れている日はシーラーを塗らないでください。 
表面が乾いたように見えても,湿気がかなり残っているはずですから, 
素地に浸透して効かせるべきシーラーが染み込めません。 
それと,屋根の塗装は午後2時半までにしてください。 
それ以降に塗ると,夜露の影響を受けて変色したり,硬化しなかったり, 
不具合が生じることがありますから。 
それから,もう一つ,屋根について申し上げておきます。 
もし,私が見積りに呼ばれて屋根に上がり,状況がMさんのお家と同じだったら, 
このまま10年放置後に葺き替えをすすめます。 
でも...電撃的にソーラー下ろしちゃった今,もう後戻りはできませんよね (^-^;) 
  
ふ〜。ここまでで,やっと,屋根についての部分が終わりました。 
23時から書きはじめて今3時です。 
残りは 
・木部用塗料の再検討 
・ケレンの度合 
・唐草の塗り範囲 
と3つ。 
コレ朝までに書き終わるかなあ, 
ということで,とりあえず,コーヒーいれてきます。 
(20分休憩+20分別件のメール書き) 
  
さて,続きです。 
> 破風白色計画が、Goodでしたが、 
> 白色ってSOP系しか無い?みたいなので、 
> ボツしました。(花より実を取ります。) 
> ↑ 
> ◎ビルデック並の性能で白色って無いですよね? 
「ビルデック」は特に耐候性に優れた塗料ではありません。 
なのに軒裏の定番なのは,軒裏には紫外線が直射せず,雨も当たらないからです。 
で,「SDキング」には白はありませんけれども, 
木部におすすめできそうな白の塗料はあります。 
但し,2液形塗料です。 
どうしますか? 
> 完全ケレンって、塗ることの3倍とありましたが、 
> 「結構...キツイな...これ...これを、やるのかよ...orz」 
【編註:下の写真はMさんが送ってくれたものです】 
  →   
この2枚の写真の間にある労力,やった人でなければ決してわからないですよね? 
ケレンしない業者がうじゃうじゃいる理由が身を持って御理解いただけたかと思います(笑) 
やらなくても塗ってしまえば色が付いてお金がもらえるわけですから, 
そんな手間をかけて長持ちしたら仕事も減って2重のバカだと考える業者がいても 
不思議ではないのであります。 
当店営業範囲内の住宅の木部は,白の下塗を入れてからSOP仕上されていることが多く, 
劣化するとしわしわにひび割れて,膜状にベロベロに剥がれてきます↓ 
  
写真で見る限り,Mさんのお家の木部は上塗が直接塗られており,とても良い劣化の仕方です。 
こういう↑剥がれ方ではないようで,ケレンすると粉になってすり減る感じではありませんか? 
だとしたら,新築時の木部塗装は,オイルステインか,プリマ油またはボイル油希釈のOP 
と思われます。 
木部の塗装についてはまだ実験中の段階で結論が出ていませんけど, 
次の塗り替えの時にケレンがラクという点ではその方法がベストなんです。 
ケレンの度合については,木部もトタンも,黄色い丸で囲われた程度で十分でしょう。 
> ◎唐草の裏側って錆止めします? 
しません。 
唐草先端(下端)は鍵形の折り返しが付いているので, 
そもそもキチンとケレンするのは無理です。 
なので,諦めてます。 
> 曽根さんの中での一般論と理想論みたいなものあれば、おしえてください。 
>(当然、莫大な時間と労力が絡んでくるのでしょうから... 
> その兼ね合いとか、取り捨て方?みたいな物ものでも結構ですので) 
唐草先端の鍵形の折り返しの内側までケレンして塗るのが理想だと思います。 
でも,私が思うに,トタンは明らかに消耗品です。 
現在主流のトタンは「カラー鋼板」といって,厚さは0.35ミリ, 
薄い鉄板に軽く亜鉛メッキされたあと,工場で表裏両面を塗装して, 
切断されて出荷されるわけですが,裏側は表側ほどの塗装はされていません。 
メッキや塗装の質がハイグレードな上級商品もありますが,切断した断面は鉄が露出, 
また折り曲げて加工されればメッキ・塗装は引き延ばされて薄くなり, 
さらに言えば,現場で取扱ううちに多少は必ずできるキズも寿命を縮めます。 
表側をいくら塗り替えても,湿気の影響を受けて裏側からも錆びますから, 
塗装は過酷な状況に置かれる外側の劣化に対する延命策には成り得るでしょうが, 
結局のところ,25〜35年程度が限界ではないかと思うのです。 
それにそもそも,カラーベストの屋根も下地の防水シートやベニヤが湿気や熱で劣化しますから, 
同程度(以前?)で葺き替えることが望ましいでしょう。 
そのときには,トタンも交換です。 
そんなこんなを考えると,外側のみの塗装で十分であろうと思うのです。 
納得していただけますか? 
> 唐草の内側とか、上側の部分ですけど 
> やはり、ケレンですよね? 
現状,あまり劣化していないということは,劣化させる力がそれほど及んでいない 
ということですから,汚れ・ホコリが落ちる程度(塗料が密着できる程度)のケレンで十分です。 
雨樋を取り替える場合は別として,木部を塗装するためだけに, 
雨樋はともかく,その金具まで外す業者はおそらく皆無ではないかと思います。 
この写真見たら,ほとんどのペンキ屋は仰天しますよ。 
> ◎木部分は、ケレンするなら前塗装が見えないぐらい(我が家なら黒色)はしたほうが、 
> ベストですか?(唐草の裏・破風の上部部分・繋ぎ目あたりでも) 
劣化の仕方がさっきの写真のようにシワシワパリパリだったら剥がした方がよいですが, 
この状態なら,汚れ・ホコリが落ちる程度(塗料が密着できる程度)で十分です。 
> 出来ることは、「ベスト」で無理なら「ベター」で^^; 
これ,名言ですねー。 
塗装の仕事は(他のどんな仕事でもそうでしょうが)ベストを目指すとキリがありません。 
では,基準をどこに置くのか? 
私の場合はトップページの冒頭にある通り,「自分の家だったらどう塗るか」です。 
これは簡単なようで,すごく難しいのです。 
どうして難しいのか,わかりますか? 
それをわかっていただくため,作業日報残しておいてください。 
どの作業に何日かかったか,最後にお聞きしたいので。 
> 塗料等のことでも、また相談するかもです...(*^.^*)エヘッ 
今回,20日の夜にメールをいただき,次のMさんの作業日である23日(←今日)の 
朝5時までに返信しようと かなり焦りましたが,間に合いませんでした...。 
電撃的に作業を開始して,段取りにロスが生じるとイヤでしょ?(笑) 
御相談はお早めにお願いいたします。 
たぶん,Mさんはもう起床して作業を始めてるのではないかと思います。 
私は幸い,本日休みなので,これから寝ます。 
安全にはくれぐれも気を付けて,後半戦も頑張ってくださいね。 
[045]2005.11.23(水)07:16 
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