外壁塗装 塗替え 神奈川 横浜曽根塗装店

塗替え Q&A外壁塗装・塗替え・建築塗装の質問と回答

[Q&A.28]セラミック塗装とは通常の外壁塗装より良いのか?

  (訪問者からのご質問です。メールでのやりとりを編集して掲載しました。)
 ※ 後半「セラミック塗料」について,スペシャルゲストの解説があります。
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《O/男性/50代前半/会社員/東京都》

築6年、在来軸組工法、多少ひび割れ有り、吹きつけタイル の個人住宅ですが、
多少早いでしょうが塗装を考えています。
やるならできたらいいもの(長持ちするもの)と考えるのですが、
ある業者は、関西ペイントや日本ペイントのような塗装だけの説明をし、勧める。
ある業者は、ペイント塗装は長持ちしないなど、
ペイント塗装に比べカラーセラミックスはすべてに優るから、
高くてもカラーセラミックスにしたほうがいい。といいます。
それぞれ、社の都合で勧めているだけで、本来の説明をしないように感じます。

外装に対する基本的考えとして、
関西ペイントや日本ペイントのような塗装(ペイント塗装というのですか?)と、
山本窯業のカラーセラミックスとではどのような使い分けになるのでしょうか。

よろしくご教示下さい。


結論を一言でいえば,好みの問題です。

O様が,『関西ペイントや日本ペイントのような塗装』と形容されているのは
単色での塗り潰しを指すのであろうと思います。
そして,『山本窯業のカラーセラミックス』と書かれているのは「石材調仕上材」とか「擬石塗料」
と呼ばれる,要するに,近付いて見ると単色ではなくて,色の異なる細かい粒が混じっているような
仕上げのことを指していると思います。

「石材調仕上材」に,細かく砕いた陶磁器(≒セラミック)や天然石が入れられているのは,
意匠性(見た目)が目的です。
極言すれば,着色のためと言い換えてもいいかもしれません。
「石材調仕上材」の高級品は最終工程でクリヤー(=透明塗料)を塗付して仕上げるのが普通で,
その後の耐久性はそのクリヤーの質によります。
ウレタンのクリアーならウレタンの,シリコンのクリヤーならシリコンの塗り替え周期です。

 http://www.sone-tosouten.com/02qa/qa0_2grd.htm

はご覧になりましたか?
ここには目安として「シリコン12〜15年」と記載しました。

機能的に見て,単色での塗り潰しよりも「石材調仕上材」の方が優れる点があるとすれば,
色褪せしにくいということは言えると思います。
単色塗り潰しタイプの塗料には“色の素”である「顔料」が入っており,
その質によっては紫外線で劣化して色が変わってしまうことがあるのに対して,
陶磁器や天然石は紫外線で劣化しにくいからです。

けれども,それを保護するクリヤーがダメになったら当然,塗替える必要が出てきます。

下の写真は,新築時に「石材調仕上材」で塗装された建物の南側2階壁面の10年後のアップです。

 10年後の石材調仕上材

クリヤー層がオブラートのようにぼろぼろに剥げ,露出した石材調の部分は手で触ると和菓子の
「らくがん」のようにざらざら落ちました。
現在の「石材調仕上材」はもっと良くなっているかもしれませんが,実際に10年なり15年なりの
年数が経ってみなければどうなるのかわかりません。
当店では残念ながら「石材調仕上材」での外壁塗装の施工例がありませんので,最近の製品の
耐久性について塗料メーカーに問い合わせてみてはいかがでしょうか?

さて,単色塗り潰しタイプの塗料の超高級品であるフッソ樹脂塗料といわれるものの中には
20年もつといわれるような塗料も存在します。
ならば,

 > やるならできたらいいもの(長持ちするもの)

というO様の御要望にぴったりなのかというと,そんなことはないのです。
以下,去年の春,私が「建築知識」という雑誌の依頼を受けて書いた原稿からごく一部引用します。

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 ■理想的な塗替え周期は施されている塗装の質や素材によって異なり、
 立地条件によっても劣化の仕方にかなりの違いがあるため、一概には言えませんが、
 施主さんが塗り替えを意識するきっかけとなるのは、「汚れ」、「変色」、「ひび割れ」、
 「剥がれ」、「錆び」です。

 ◇「汚れ」は躯体そのものにダメージを与えるわけではありませんが、“保護”だけでなく
 “美粧”も塗装の目的ですから、“保護膜”としては問題がなくても汚れればキレイにしたくなる
 のが人情でしょう。その意味で、「汚いまま長持ち」する高耐久塗料は魅力ある選択とは言えない
 ということになり、その実力はともかく「低汚染」を謳う塗料が増えてきています。

 ◇「ひび割れ」(クラック)は塗膜の表面に細かく生じる場合もありますが、施主さんが発見する
 のは主に躯体を原因とするひび割れです。塗装後に下地に生じるクラックに対して、伸びて追従
 させようという考え方から生まれた弾力性のある塗料もありますが、そのような塗膜とて当初の
 柔軟性をいつまでも保つわけではありませんし、そもそも躯体や基礎や地盤を原因とするような
 クラックに塗膜で対処させるには限界があります。塗膜の伸び率を超えた下地の動きが生じれば、
 当然裂けてしまいますので、塗膜の“保護膜”としての機能は失われることになります。
 太いクラックからは当然雨水等が侵入し、躯体にダメージを与えますので処置が必要です。
 なお、近年、外壁塗装工事に保証を付ける業者が増加していますが、クラックに関しては、
 (塗膜表層の微細なひび割れ以外は)塗装に責任は無いため、保証適用外となるのが通例です。

 ■構造的要因によるトラブルや被塗物自体の宿命的劣化の“阻止”を塗装に求めるのは無理がある
 と言わざるを得ませんが、劣化が軽度のうちに手入れをすることが物理的にも経済的にも心理的にも
 望ましいことです。
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つまり,木造モルタルの建物の場合,ひび割れの問題,そして,どんなものでも,屋外のものは
「汚れ」の問題があるので,15年も20年も塗り替えをしないで済ませようと考えるのは
間違っていると私は思います。
8年から10年程度で「健康診断」兼「お色直し」をするような気持ちで,お家をいたわってあげて
ください。


以上,2003年1月13日着信のメールから始ったやりとりです。

この翌年,「石材調仕上材」を販売している某塗料メーカーの方が,たまたま当店にいらっしゃる
機会がありました。
事前に以上のやり取りをプリントして用意し,「この返信に間違いはありませんか?」と読んで
もらった結果,OKをいただきましたので,掲載しました。

なお,その際に,「石材調仕上材」の塗替えについて,あれこれお話を伺いました。
以下に,私とメーカーの方(メ)との会話のごく一部を再現いたします。

 私:「石材調仕上材の塗替えは,クリヤーだけ塗ればよい」って無理ですよね?
   汚れが落ちないでしょ?
   「汚れてきたから塗替える」っていう施主さんが多いわけですから。

 メ:石材調の部分の厚みがあれば,表面をサンダーで削ってからクリヤーを塗る場合があります。

 私:すごくたいへんですね。

 メ:ええ,まあ。

 私:それに,下地のモルタルがひび割れたり,ALCでコーキングの増し打ちしたら,
   部分補修できないですよね?

 メ:そういう場合は面で区切ってやり直すことになります。

 私:う〜ん,後々の手入れを考えると,どうなんでしょうかねえ?

 メ:デザイン性が売りの品物ですから。

「セラミック塗料」と称されるものの中には,「石材調仕上材」とは異なり,見た目には従来の
「塗り潰しの単色塗料」と何ら区別が付かないものもあります。

「アクリル→ウレタン→シリコン→フッ素」の各グレードごとに「セラミック塗料」が存在し,
価格もピンキリです。
某塗料メーカーの方から「この粉末が入っています」と実物のセラミック微粉末を見せてもらった
こともあれば,別のメーカーの方から 「セラミックの粉末が入っているのではなくて,樹脂が
セラミック“変性”してあるのです」という説明を受けたこともあります。
結局どういうコトなのか,私の頭では未だにナゾが多く,うまく説明できませんが,要するに,
「塗り潰しの単色塗料」の「セラミック」は 汚れにくくするための新技術ということのようです。

さらに,「無機塗料」と称されるジャンルの塗料が「セラミック塗料」とよばれることがあり,
アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素などの合成樹脂を主成分とした「有機塗料」よりも
「無機塗料」の方が紫外線に強く,高耐久であると喧伝される場合があります。
しかし,建築用塗料の場合,「無機塗料」といっても,合成樹脂とのブレンドで成り立っているのが
普通なので「無機塗料」イコール,高耐久と手放しで認めることはできません。

以上,ややこしい話ですが,一つだけ言えることは,ある塗料がどのように語られるとしても,
カタログやパンフレットの宣伝文句の鵜呑みはできないということです。
“セラミック”を臭わすネーミングでも普通に汚れる塗料もありますので... (-_-;)

さらに,助っ人として,

セラミック塗料』『シリコン塗料』『無機塗料について,
スペシャルゲストに解説をお願いしました。
     

今井塗装(群馬県)
今井廣さん
 の解説

HPはこちらです → 今井塗装

(回転する六角形は「ベンゼン核」です)

最近は、塗料に関する色々な言葉や名前が多くなっております。
塗り替え工事等で、使われる塗料の選択に戸惑う事も多いようです。
建物の新築時や塗り替え工事等で、使われる塗料に限定して考えてみたいと思います。

『セラミック塗料』
塗料メーカーの表現では、あまり見かけないのですが、セラミック塗料があるのか、ないのか?
『セラミック塗料』と言われるもは、以下のようなものと思います。

(A)石材調塗料といわれるもの
天然石や陶磁器(セラミック)を砕いた比較的大きめな粉末で色や石のような感じを出しています。
これらの粉末をつなぎとめたり、密着させているのは他の塗料と同じ有機樹脂です。
さらに透明な上塗り塗料(有機樹脂)を塗る場合もあります。
石のように見えても塗膜がセラミックになるわけではありません。
天然石や陶磁器粉末その物は経年変化はありませんが、
塗料の耐久性は、使われている樹脂の種類や透明な上塗り塗料の種類の耐久性に準ずるようです。

(B)低汚染塗料といわれるもの
塗り替え工事では多く使われている塗料です。
石やセメント、セラミック等の成分の一つである無機化合物のシリカ(二酸化ケイ素 SiO2 )の、
極めて微細な粉末(10〜40ナノメートルの粒子と思われます)が、
有機樹脂塗膜の表面にくるように配合されているようです。
塗膜表面が低帯電性になり、又、親水性になり、雨で濡れる部分は汚れが落ちやすくなり、
低汚染塗料と言われます。
他の塗料と同じく、各樹脂(アクリル、ウレタン、アクリルシリコーン、フッ素)や
塗料の形態(1液、2液、水性、弱溶剤、強溶剤)があります。
仕上がり面は他の塗料と同じです。
  ※長さ単位:ミリミクロン=nm(ナノメートル)=百万分の1ミリ

(C)断熱塗料あるいは遮熱塗料といわれているもの
セラミック製の微小中空体の粒子(ピンポン玉のように中が空洞になっている小さな粒子)を
塗料の中に混合してある、断熱塗料あるいは遮熱塗料といわれているものも『セラミック塗料』
と言われることがあるようです。
空洞の中が真空のものもあり、真空は熱伝導が0ですので、一番断熱の効果があるようです。
この塗料は少し厚塗りが多いようです。
耐久性は他の塗料と同じく使われている樹脂の種類や形態に準ずるようです。
塗膜はセラミックにはなりません。

まとめ。

(1)塗装してセラミックになる塗料はない。
陶磁器のように高温で焼かないとセラミックはできません。

(2)セラミックを配合してあるだけで、塗料の耐久性は変わらない。
耐久性は、基本的にはその塗料の樹脂の種類や形態によると思われます。

(3)塗料の形態や、メーカーにより価格や効果は異なる。

(4)「セラミックシリコン樹脂」はない。
『セラミックシリコン』あるいは『セラミックシリコン樹脂』なる表現は、
セラミック(シリカの微粒子)とシリコーン樹脂(アクリルシリコーン樹脂)が化学結合していない
ようなので、そういう樹脂があるわけではなく、
セラミック(シリカの微粒子)を配合したシリコーン樹脂(アクリルシリコーン樹脂)
と考えて良いと思われます。

 

『シリコン塗料』
建築用塗料でシリコン塗料あるいはシリコーン塗料と言ったら、
アクリルシリコーン樹脂塗料の事と考えて良いと思います。
アクリルを省いていう事も多いです。

シリコーン樹脂はきわめて種類が多く、建築用塗料、耐熱塗料、コーキング材、 オイル、ゴム等、
多種多様にわたります。

シリコーン樹脂の化学式には、セラミックの一つの成分であるシリカ(SiO2)のケイ素(Si)が
ありますが、セラミックとはまったく別の物質です。

塗料の場合は、
有機化合物ポリマーのシリコーン樹脂(シロキサン結合を有する、高分子有機化合物)塗料
と言った方が正確なのですが、シリコン塗料とかシリコン樹脂塗料とか言われたりします。

塗料としては他の塗料と同じく、1液、2液タイプとあり、 水性、弱溶剤、強溶剤とあり、
シロキサン結合を含む量、密度の違いにより、性能や塗料価格もかなり異なります。

シリコーン樹脂だけでは低汚染効果(親水性)はなく、上記のセラミック(シリカ微粒子)配合の
低汚染塗料が各塗料メーカーから販売されています。

 

『無機塗料』
名前のとおり、無機質成分(燃えない)で作られた塗料です。
昔の吹付材「セメントリシン」「セメントスタッコ」はその意味で「無機塗料」です。

最近は、耐熱性や耐火性を上げて、造膜成分に少し有機樹脂(燃える)が入っていても、
『無機塗料』と言う場合がありますが、正確な言い方ではありません。
区別のために有機樹脂を含まない『無機塗料』を『完全無機質塗料』と言ったりします。

無機質成分を塗装して塗膜にするためには、造膜の役目をする物質が必要ですが、
造膜の役目をする無機の物質は少なく、シリカゾル、アルミナゾル、酸化チタンゾルなども
造膜性が足りません。
ガラスと同じような成分の水ガラスがありますが、造膜性は良くても耐水性がなく、
耐水性を上げるには特殊な処理や工程が必要になります。

化粧を兼ね備えた、現場施工の『完全無機質塗料』は少ないように思います。

無機塗料として目にふれるものとしては、化学の実験台の天板や一部の新幹線ホームの壁のボード、
高速道路の一部のトンネル内の側壁パネルなどでしょうか。(いずれも工場塗装品)

コーティング材や表面処理剤では一部無機のものもあるようですが、塗料とは又、別と思われます。


  今日も雨で休みです。お客さんに渡す写真ファイルでも作ろうと思います。
  女房は朝から陶芸教室に出かけ、いびつな茶碗(セラミック)を作りに行っています。
  陶芸の土もケイ砂(SiO2)だけでは焼いても変化しないで、
  アルミの入っている粘土質(鉱物名カオリン)がないと焼いたときに固まりません。

  セラミック塗料が頭に残っています。

                            2006.7.19


 今井さん,どうもありがとうございました m(_ _)m


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